妄想デート5

前回のあらすじ
公演は始まってしまったが、まだ衣装を買えていない僕。とりあえず、彼女の後ろを歩いていきながら新宿通りを新宿三丁目方面へ向かっている。

後ろをついて歩きながら、今日彼女が夏らしいシャーベットカラーのワンピースを着ていることに気が付いた。似合っている。しかし、ひろみがどんな服を着てきたのか、いままでそんなことを見る余裕もなかったのかと思うと少し恥ずかしい。もっと余裕のある男にならなければ。

僕らは手始めにUNIQLOに向かった。というか気づいたらUNIQLOにいた。彼女との話に夢中で全く気付かなかった。世の中にしばしばいる、話に夢中で自分がどんな道を通ってきたか道中の記憶が全くないという、信じられない女子みたいなことに私がなってしまうとは思わなかったので、これもまた心の中で一人恥じた。

彼女とは最初は当たり障りのない話をした。宗教の話、支持政党の話、病気の話…。
嘘だ。

住んでいるところとか、今勉強していることの話、劇団の話、いま彼女はいるの?とかそんなことを話した。彼女はいません、といったとき彼女の目の奥がきらりと光った気がしたが、気のせいだろう。
でもUNIQLOまでは彼女からの質問ばかりだった気がする。ほんとは僕もひろみの5か年計画の進捗状況について聞きたかったが、彼女の質問に答えるので精いっぱいで聞きそびれてしまった。

UNIQLOはどんな色の服が合うのか、サイズはどのくらいかとかを確かめたのだが、彼女が服を僕の体に当ててくるとき、手が体に軽く触れるのに久々にドキドキした気持ちを感じた。正直、最近女性にドキドキすることがなく、自分は女性に興味がない人間なのではないかと思っていたこともあったが、どうやらそうではなかったらしく安心した。まったく、さっきから恥じたりホッとしたり、彼女には数年なかったくらい心が動かされている。

店を出て三丁目の交差点の方に向かいながら歩いていると、前でストリートミュージシャンがサックスの演奏をしているのに気がついた。曲名はわからないが、耳に心地よい演奏で二人とも自然と彼の前で足を止めていた。
「こういう曲好きなんですか?」初めて僕から質問ができた。
「うん、なんか明るい気持ちにさせてくれるじゃない?そういうのが好き」
なにか最近いやなことでもあったのだろうか。そう思ったが、聞けなかった。

(つづく)

まだまだ終わらないけど、2日目、最初の公演がはじまってしまう!
みなさまどうぞお越しくださいませ!お待ちしております!

あと、日付が21日になってしまってるけど、1日に二つ書き込むやり方がわからなかったんで、これは本当は20日の記事です。

劇団だるい009「I will say goodbye.」
@阿佐ヶ谷シアターシャイン
20日 11:30〜 15:30〜 19:30〜
21日 11:30〜 15:30〜