妄想デートその6

妄想デートその6

公演が終わったが、全く服を買えていない僕。
いまだにストリートミュージシャンの演奏を聴いている。さっさと服を買わなければいけないが、あと5分で式根島行の船に乗るために家を出ないといけない。というかもう頭の中は式根島のことでいっぱいだ。

サックスを聞きながら、ひろみが言った「明るい気持ちにさせてくれる曲が好き」ということばが頭を離れない。なにかあったのに違いない。聞くことで彼女をより暗い気持ちにさせてしまうことはわかっていたが、聞きたい気持ちを抑えることができなかった。
「何かつらいことでも?」
「別になにもないですよ。・・・ちょっとお茶していきませんか?」
断る理由がないので喫茶店がないか探す。この時点で稽古のことはどうでもよくなっていた。べつに僕は出ないし。多少遅れたって中野さんが何とかしてくれているだろう。そんなことよりひろみの話を聞くことの方が大事だった。
しかし休日の新宿ではなかなか空いている喫茶店がみつからない。空いてないね、なんて言いながら歩きつつ、ふと振り返るとひろみが足を止めていた。
「やっぱり大丈夫です。ありがとうございました」
そんなはずない。ぼくはいてもたってもいられなくなり彼女の手を取り歩き出していた
式根島に行こう。いやなことも全部忘れられる。いまから竹芝桟橋に行こう」
「え、ちょっと、さ、佐溝さん!」


式根島旅行記に続く
もうだめ。すでに心は洋上。

劇団だるい009「I will say goodbye.」を見に来てくださった方々、公演にかかわってくれたすべての皆様に感謝感謝です。ありがとうございました!
今後も劇団だるいをごひいきに!では!